朝日新聞「折々のことば」名言集!鷲田清一が紡ぐ言葉の深層
「折々のことば」のルーツを語る上で欠かせないのが、1979年から2007年まで約28年間にわたって連載された詩人・大岡信氏による名物コラム「折々のうた」です。短歌や俳句、詩などの韻文を通じて日本語の美しさと情念を伝え続けた伝説的連載の終了後、朝日新聞の朝刊1面には長くその余白が残されていました。
そのバトンを受け取る形で2015年4月にスタートしたのが、鷲田清一氏による「折々のことば」でした。元大阪大学総長であり、専門用語に閉じこもらない「臨床哲学」を提唱してきた鷲田氏への依頼は、単なる名言解説の枠組みを超えた新たな思索の場を朝刊に生み出す試みでもありました。
鷲田氏が選ぶ言葉の最大の特徴は、古典や名著の引用にとどまらず、居酒屋の隣席から聞こえてきた会話や、被災地でボランティアが漏らした一言、認知症を患う人の不意の問いかけなど、生身の人間の暮らしからこぼれ落ちた生きたフレーズにあります。日常の裂け目に潜む真理を鮮やかに浮かび上がらせる手法こそが、本連載を唯一無二の存在へと押し上げました。