稀代の狂気か天才参謀か?辻政信の失踪と機密文書が暴く戦後の闇

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1945年8月の敗戦時、バンコクにいた辻は即座に姿を消した。イギリス軍や連合国軍による戦犯追及の手を逃れるため、僧侶に変装してタイ、仏領インドシナ、そして中国大陸へと逃走。国民党政権の特務機関と接触を図りながら、過酷な逃亡生活を生き延びた。この潜伏劇を自らドラマチックに描き上げた手記『潜行三千里』は、戦犯指定が解除された後の1950年に刊行されるや否や、空前の大ベストセラーを記録する。

当時の日本人は、敗戦の虚脱感の中でたくましくアジアを生き抜いた辻の逃亡記に熱狂した。メディア・出版報道は彼を「昭和の風雲児」として大々的に祭り上げ、世論は熱狂をもって迎え入れた。その人気を追い風に、辻は1952年の衆議院議員選挙で旧石川1区から出馬しトップ当選を果たす。さらに参議院議員へと鞍替えし、全国区で上位当選を果たすなど、政治家としても絶大な存在感を示した。

軍事・近現代史ノンフィクションの視点から見れば、戦犯追及から逃げおおせた男が民主主義の選挙で熱狂的支持を集めた事実は、戦後日本の集団心理のねじれを克明に映し出している。辻は自らの戦争責任を巧妙に糊塗し、反米・自主防衛を掲げるポピュリストとして見事に自己演出を完成させていた。

山田 真由

山田 真由

自動車・モビリティライター

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