伝説の2群制覇王「高崎山のベンツ」波乱の生涯と失踪の全記録
2013年の晩秋、ベンツの肉体には確実に老いの影が忍び寄っていた。歩行は緩慢になり、かつて隆起していた筋肉は削ぎ落とされ、毛並みにも白いものが混じる。それでもC群のサルたちは、老いた王に対して決して無礼な態度は取らなかった。彼が歩けば自然と道が開かれ、若いオスたちも敬意を払って頭を下げた。
そして同年12月。ベンツは突然、エサ場から姿を消した。職員や熱心なファンによる必死の山狩りが行われたものの、その姿が再び確認されることはなかった。年が明けた2014年1月、動物園はベンツの死亡を公式に認定し、異例のお別れの会が執り行われた。
野生動物保護の現場において、老いた個体が最期を迎える際、群れから離れて森の奥深くへと分け入るのは決して珍しいことではない。自らの死期を悟り、誰にも看取られることなく静かに山へ還る。最後までアルファオスとしての威厳を保ち、群れに乱れを生じさせないための、あまりにも潔い幕引きだった。