コチニール色素の正体は虫?危険性の真相と使われる理由を徹底解明
結論から申し上げますと、「コチニール色素は虫から作られている」という話は紛れもない事実です。その正体は、生物分類学上で半翅目(カメムシ目)カイガラムシ上科に属する「エンジムシ(臙脂虫、学名:Dactylopius coccus)」と呼ばれる昆虫です。
エンジムシは、主にペルーやメキシコ、カナリア諸島などの乾燥地帯に自生・栽培されているウチワサボテンに寄生して生活しています。体長は雌の成虫でわずか2〜4ミリメートル程度。雄には羽がありますが、色素の原料として利用されるのは羽を持たずサボテンに固着して養分を吸う受精した雌の成虫のみです。
雌のエンジムシは外敵から身を守るための生体防御物質として、体内に鮮やかな赤色を呈するアントラキノン誘導体「カルミン酸」を蓄積します。乾燥させたエンジムシの乾燥重量のうち、およそ15〜22%がカルミン酸で占められており、これを水や含水エタノールで抽出・精製したものが、私たちが口にする「コチニール色素」や「カルミン酸色素」です。
この天然着色料の歴史は極めて古く、15世紀以前のマヤ文明やアステカ帝国において衣服の染色やフェイスペイントとして重用されていました。大航海時代以降にスペイン艦隊によってヨーロッパへ持ち込まれ、イギリス陸軍の象徴である「レッドコート(赤服)」の染色に使われるなど、数世紀にわたり人類の生活を彩ってきた長い実績を持ちます。