なぜ台風は異常な迷走を見せるのか?高気圧と偏西風のメカニズム
どれほど計算能力が向上しても、台風予測には依然として「魔の区域」が存在する。日本の気象庁と、世界気象機関(WMO)に加盟する欧米の各気象機関のデータを比較すると、その課題が浮き彫りになる。
最大難所の一つが、台風が太平洋高気圧の縁を離れ、偏西風に乗る「転向点」の判定だ。欧州中短期天気予報センター(ECMWF)や米国環境予測センター(NCEP)のモデルと気象庁の予測が、時に数百キロメートルも食い違うケースが発生する。これは、高層大気の観測データが不足している洋上での初期値のわずかなズレが、時間の経過とともに増幅されるためだ。
また、台風自身が引き起こす暴風によって海面が攪拌され、深層の冷たい水が吹き上がる「深層混合効果」の評価も機関によって異なる。水温低下は台風を衰退させる要因となるため、進路だけでなく強度の予測ブレも進路全体の進行速度に直接影響を与えるのだ。