自閉症スペクトラムに特有の顔つきはある?医学的根拠と視線の真相
では、なぜ多くの人が「あの人は自閉症スペクトラム特有の雰囲気がある」と直感的に感じてしまうのでしょうか。その正体は、顔のパーツ配置ではなく、対人コミュニケーション時における自閉症スペクトラム視線合わない理由と表情の運動制御に隠されています。
脳科学・認知心理学の観点から解明されている主な理由は、以下の3点に集約されます。
第一に、アイコンタクトに対する脳内扁桃体の過活動です。定型発達者は他者の目を見ることで相手の意図を無意識に推し量りますが、ASD当事者の脳内では他者の視線が過度な情動覚醒やストレス反応(扁桃体の過剰興奮)を引き起こすことが報告されています。当事者の手記やインタビューでは「相手の目を直視すると、強い光を当てられたような眩しさや恐怖を覚える」と語られており、自己防衛として視線を外したり、焦点をぼかしたりする結果、他者からは「うつろな目つき」「どこを見ているかわからない瞳」と映るのです。
第二に、自閉症スペクトラム表情乏しい理由として挙げられる「感情表現の非同期」です。定型発達者は対話中、共感を示すために無意識に相手の表情を真似る「表情模倣(ミラーニューロン系の働き)」を行います。しかし、ASD当事者はこの無意識の同調反射が起こりにくく、関心のない話題では顔面筋が完全に弛緩した状態になりがちです。これが「能面のような無表情」「冷淡な印象」を与えます。
第三に、自閉症スペクトラム子どもの表情において顕著に見られる低緊張(筋緊張低下)や過緊張の影響です。口唇閉鎖力が弱いために口元が半開きになったり、逆に緊張から眉間に不自然な力が入り続けたりすることが、静止画としての顔立ちではなく「動的な癖」として他者の違和感を惹起します。