ヒロアカ緑谷出久の声優・山下大輝の迫真演技と最終章の収録秘話
株式会社集英社が発行する『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった当初、緑谷出久という少年のキャスティングは極めて繊細な舵取りを求められていた。ただ威勢が良いだけのヒーローではない。誰よりも臆病で涙もろく、それでいて誰かを救うためなら躊躇なく自己を犠牲にする狂気的なまでの純粋さ。オーディションで原作者の堀越耕平を唸らせたのは、山下大輝が発した飾り気のない生々しい声だった。「デクがそこにいる」と評されたその芝居には、理屈を超えた感情の奔流が宿っていた。
初期のデクは、自信のなさや恐怖から声を上ずらせ、震わせる場面が目立った。だが、苛烈な戦いを重ねるにつれて叫びの質は劇的な変化を遂げていく。仲間を守るための怒声、理不尽な現実への慟哭、そして孤独に耐えかねて漏れ出たかすかな息遣い。山下は台本の活字をなぞるのではなく、デクが流す涙の温度を喉に宿すようにして演じ切った。王道の少年漫画でありながら、これほど痛々しく、かつ気高い主人公像を成立させた表現力は、唯一無二の輝きを放っている。