リンゴの唄誕生の裏に隠された涙の真相|並木路子と映画そよかぜの軌跡
太平洋戦争終結からわずか2カ月後の1945年10月11日、松竹映画『そよかぜ』が封切られました。日本のエンターテインメント界が敗戦の混乱で機能を失いかけていた時期に製作されたこの作品こそ、名曲『リンゴの唄』が世に出る原点です。
映画の劇中歌として制作された本作は、翌1946年1月(または諸説あるレコード発売期)に日本コロムビアからSP盤としてリリースされるや否や、瞬く間に日本全国へ広がりました。物資不足でレコード自体の流通が限られていた時代にもかかわらず、闇市の街頭スピーカーやラジオから朝夕を問わず流れ、推定10万枚から数十万枚とも言われる当時としては規格外の売り上げを記録します。
軍国主義的な行進曲や悲哀に満ちた歌ばかりを強いられていた国民にとって、瑞々しい果実をモチーフにした軽やかなリズムは、重苦しい空気を一変させる「平和の訪れ」そのものでした。