大河『いだてん』はなぜ歴代最低視聴率から「最高傑作」へ化けたのか
『いだてん』の初回視聴率は15.7%とまずまずの滑り出しを見せたものの、第6回で早くも一桁台へ転落し、単話の最低視聴率は3.7%にまで落ち込みました。なぜここまで数字が振るわなかったのか、当時のテレビ受像機による視聴率測定の限界と番組構造の乖離から紐解く必要があります。
従来の大河ドラマが抱えていた強固な視聴者層は、60代以上のシニア層を中心とする「歴史劇・合戦絵巻」を好む層でした。ところが本作が描いたのは、1912年のストックホルム五輪から1964年の東京五輪に至る日本の近現代スポーツ史です。髷(まげ)を結った武士や華々しい合戦シーンは一切登場せず、明治・大正・昭和の泥臭いアスリートや政治家たちの奮闘劇が展開されました。
さらに脚本を手掛けた宮藤官九郎が仕掛けた「時間軸の解体と再構築」が、リアルタイムのライト層を戸惑わせました。古今亭志ん生(演:ビートたけし/若き日の孝蔵:森山未來)による古典落語の演目と、現実のオリンピック誘致の物語が並行して進み、時代が目まぐるしく前後する構成です。「途中から見ると話が分からない」「登場人物の名前と顔が一致しない」といった声がシニア層から噴出し、日曜夜8時の定点観測から離脱する視聴者が続出しました。
しかし放送業界の内部データや録画視聴率(タイムシフト視聴率)を分析すると、全く異なる景色が見えていました。録画して繰り返し見る熱心なコア層や、放送と同時にSNSで感想を語り合う若年・中年層の間では、初回から極めて密度の高い熱気が渦巻いていたのです。