田中邦衛が遺した魂『北の国から』黒板五郎の真実と不滅の名演録
カメラの向こう側で見せる圧倒的な存在感とは裏腹に、私生活や撮影現場での田中邦衛は、極めて謙虚で気配りの人であったという。『北の国から』で息子の純役を演じ、幼少期から青年期までを共に過ごした吉岡秀隆は、田中邦衛を「本当の父親のような存在」と慕っていた。極寒の撮影現場で震える子役たちを自身の懐で温め、芝居に悩む共演者には言葉ではなく温かい眼差しで寄り添い続けた。
決して偉ぶらず、スタッフ一人ひとりに対しても分け隔てなく腰を低く接する。NGを出せば誰よりも恐縮し、頭を下げて現場の空気を和ませる。関係者が口を揃えて語るのは、その類まれな誠実さと優しさだ。彼がスクリーンで見せたあの独特の「照れ」や「もどかしさ」は、演技を超えた彼自身の温もりそのものであった。