口へんに属の漢字「嘱」の読み方と意味|委嘱・嘱託の違いと入力法
「嘱」という漢字にまつわる知識の中には、一般にはあまり知られていない事実や、ネット上で広まっている誤認が存在します。日常や実務で役立つトリビアと注意点を整理しました。
1. 旧字体「囑」の存在と戸籍・登記での取り扱い
「嘱」には「囑」という旧字体が存在します。旁の部分が旧字体の「屬」になっており、画数は21画に達します。戦後の当用漢字表および現在の常用漢字表において新字体の「嘱」へ整理されましたが、古い不動産登記簿や戦前の公文書、歴史ある公益法人の設立趣意書などには「囑」の表記がそのまま残っています。人名用漢字や古典籍の引用などを除き、現代の通常のビジネス文書で「囑」を使用する必要はありません。
2. 「嘱望」と「熱望」の違い
「将来を嘱望(しょくぼう)される若手」という言い回しを、「本人が強く望んでいる」と誤解している人が散見されます。「嘱」には「望みを託す」「期待をかける」という意味があるため、嘱望とは「周囲の人々や世間が、その人物の前途に大いなる期待を寄せること」を意味します。主語は本人ではなく、常に周囲・社会側にあるという点が最大の注意点です。
3. 日本の苗字に「嘱」は存在するのか?
名字由来の専門データベースや戸籍統計を精査しても、「嘱」という文字を含む日本の姓(名字)は基本的に確認されていません。漢字の性格上、「口頭で言いつける」「託す」という動詞的・公的な職掌のニュアンスが強く、地名や自然地形、氏族名に転換される機会がほとんどなかったことがその要因と考えられています。