新宿西口の路地裏で起きている「魚の価格破壊」──物価高の2026年、タカマル鮮魚店が皿に盛る狂気と勝算
名物の「黒丼」を頼めば、黒光りする桶のなかに漆黒のマグロが山を築いて登場する。刺身というよりは、もはや肉塊だ。一般的な寿司屋のネタの優に三倍はある厚み。歯を立てると、ねっとりとした赤身の鉄分と脂の甘みが口いっぱいに広がる。薄く切って皿の余白を美しく見せる日本料理の様式美とは対極にある、暴力的なまでの質量だ。
「薄く切る手間をかけるくらいなら、豪快にぶつ切りにして客を早く満腹にさせたほうがいい」。厨房の奥で包丁を振るう男たちの動きには一切の無駄がない。水産資源の減少と輸送コストの跳ね上がりによって、都内の魚価は2026年現在も高止まりを続けている。それにもかかわらず、この店はポーションを減らす逃げを選ばない。皿の上のボリュームこそが、客を呼び戻す最強の武器だと知っているからだ。