あえて不便がなぜ大ヒット?富士幼稚園やレトロに学ぶ不便益の神髄

あえて不便がなぜ大ヒット?富士幼稚園やレトロに学ぶ不便益の神髄の疑問点について、分かりやすい解説を詳しくお届けします。

教育と空間設計の分野において、不便益の象徴的事例として世界中から視察が絶えないのが、東京都立川市にある「ふじようちえん(富士幼稚園)」です。

佐藤可士和氏がクリエイティブディレクションを手掛け、手塚貴晴氏・手塚由比氏が設計したこの園舎には、一般的な最新施設に見られる「安全で快適なバリアフリー」とは正反対の仕掛けが意図的に組み込まれています。

たとえば、園舎の引き戸はあえて滑車を重くし、最後まできっちり閉め切らないと数センチの隙間が空くように作られています。冬場、隙間風が入ると子どもたちは寒さを感じ、「最後まで閉めないと寒い」と自ら学習して戸を閉めるようになります。完全自動ドアでは決して身につかない、他者への配慮や環境適応力が自然と育まれる仕掛けです。

また、園庭や屋根の上には意図的に緩やかな起伏や障害物が配置されています。子どもたちは平坦ではない地面を走り回る中で、転びそうになりながらバランス感覚を養い、自らの限界を身体で覚えていきます。「わずかな危険や不便を用意しておくことで、大怪我を防ぐ危機管理能力が身につく」という教育的価値は、まさに不便益の真骨頂です。

井上 凛

井上 凛

シニアコンテンツプロデューサー

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。