最大多数の最大幸福は本当に正しいのか?功利主義の限界と現代的問題を徹底解説
功利主義は非常に明快で実践的な意思決定ツールである一方、歴史的にも哲学的にも数多くの批判に晒されてきました。主な批判の理由は以下の3点に集約されます。
1. 少数派(マイノリティ)の権利侵害と「多数者の専制」
社会全体の効用が最大化されるのであれば、特定の少数派が過度な犠牲を強いられても正当化されてしまう危険性があります。例えば、大多数の市民の安心感のために無実の容疑者をスケープゴートにして処罰するような行為も、計算上は「善」になりかねません。
2. 効用の個人間比較と数値化の限界
「誰かの喜びの大きさ」と「別の誰かの苦痛の深さ」を客観的に比較・合算することは原理的に不可能です。快楽計算は理論上美しく見えても、実際の測定においては恣意的な主観が入り込まざるを得ません。
3. 行為の結果予測の不確実性
ある行為が最終的にどれだけの幸福を生むかは、未来にならなければ分かりません。良かれと思って行った決断が予期せぬ大惨事を招いた場合、功利主義では事後的に「悪」と断定されるため、意思決定者の事前の責任範囲が曖昧になります。