加藤和彦の遺書全文に迫る真相|「音楽への絶望」と最期に遺した言葉
なぜ、あれほど多彩な才能に恵まれた巨匠が「音楽への絶望」を抱くに至ったのでしょうか。その根底には、深刻なうつ病との闘病と、デジタル化・ファスト消費へと急速にシフトしていった現代の音楽マーケットに対する深い違和感がありました。
晩年の加藤和彦は、不眠や激しい倦怠感、気分の落ち込みに悩まされ、精神科や心療内科に通院して抗うつ薬の治療を受けていました。妥協を一切許さない完璧主義者であったがゆえに、病状による集中力の低下や創作ペースの乱れは、彼自身のプライドを激しく傷つけました。
さらに、彼を追い詰めたのは時代の変化です。加藤は音の響き一つ、スタジオの空気感、ジャケットのデザインやアルバム全体の物語性に至るまで、莫大な時間と情熱を注ぎ込む本物のオーガニックな音楽制作を信条としていました。しかし、2000年代以降急速に進んだデジタル配信や圧縮音源の普及、音楽が「じっくり聴く芸術」から「手軽に消費されるBGM」へと変わっていく現実に直面し、強い孤立感と虚しさを抱くようになったのです。