忠犬ハチ公が渋谷駅で10年待った真相|死因の科学的解明と美談の裏側
ハチ公を語る上で最大の謎とされてきたのが、1925年(大正14年)5月21日に急逝した主人を、なぜ1935年(昭和10年)3月8日に息を引き取るまでの約10年間も待ち続けたのかという点です。
美談として語られる純粋な忠誠心の一方で、昭和初期の渋谷駅周辺の記録や関係者の手記からは、動物行動学的に極めて合理的な別の要因が浮かび上がってきます。
当時、渋谷駅周辺には多くの屋台が並び、特に駅前の焼き鳥屋の店主たちがハチに肉や皮の残りを与えていたことは有名な事実です。このことから「ハチは主人を待っていたのではなく、単に焼き鳥の匂いに釣られて通っていただけではないか」という、いわゆる忠犬ハチ公 焼き鳥 説が取り沙汰されるようになりました。
しかし、行動科学の視点から当時の生活環境を多角的に分析すると、この二項対立はどちらか一方のみが正しいわけではありません。
犬にとって、毎日の決まった時間・場所で特定の人物と接触するルーティンは強固な生活習慣(オペラント行動)として定着します。ハチにとって渋谷駅は「最愛の主人と出会える最高の記憶の場所」であると同時に、「空腹を満たしてくれるエサ場」という強烈な正の強化が働いていたと考えられます。崇高な愛情と生存本能に基づく行動が重なり合っていたことこそが、忠犬ハチ公 待ち続けた理由の真実の姿です。