まずい!もう一杯」Cm俳優・八名信夫の現在は?名セリフ誕生に隠された衝撃真相
商品の宣伝であるにもかかわらず、堂々と「まずい!」と言い放つ手法は、現代のマーケティング視点で見ても極めて斬新かつリスキーな試みでした。しかし、この伝説のコピーは、広告代理店のコピーライターが練り上げた計算ずくのセリフではありませんでした。
当時のインタビューや八名信夫氏の手記によると、撮影現場に用意されたキューサイのケール青汁は、飲みやすく改良された現代の製品とは全く異なり、搾りたての生のケール100%による強烈な青臭さと容赦のない苦味を放っていました。リハーサルなしの一発勝負で青汁を一気に飲み干した八名氏は、あまりの不味さに喉が詰まり、思わず顔を激しく歪めて「まずい!」と本音を吐き出してしまったのです。
スポンサー企業の商品に対して「まずい」と口走ってしまったことで、現場は凍りつき、八名氏自身も「やってしまった、これで降板させられる」と撮り直しを覚悟しました。ところが、その場に立ち会っていたキューサイの創業者・長谷川潔社長(当時)の判断が事態を一変させます。長谷川氏は「商品の苦さを誤魔化さず、嘘のない正直な表情を届けることこそが消費者の信頼につながる」と確信し、そのテイクの採用を決断。八名氏が咄嗟に悪役らしい凄みを利かせて付け加えた「……もう一杯!」というフレーズと合わさり、テレビCM史に残る傑作が誕生しました。
美辞麗句を並べるのが当たり前だったバブル終焉期の広告界において、欠点を包み隠さず伝える「両面提示(短所を伝えることで長所の信憑性を高める心理効果)」を体現したこのCMは、視聴者の心を瞬く間に掴み、キューサイ青汁の売上を飛躍的に押し上げる原動力となりました。