八ヶ岳の森に響くポップアートの地鳴り——2026年、なぜ世界は「中村キース・ヘリング美術館」を追い求めるのか
コレクションの核を成すのは、実業家・中村和男氏が四半世紀以上にわたって情熱を注ぎ集め上げた約300点におよぶ作品群だ。中でも圧巻なのは、ヘリングの原点である「サブウェイ・ドローイング」の実物である。
警察の目を盗み、地下鉄の空き看板に貼られた黒い紙へ素早くチョークで描かれた絵。捕まれば即逮捕という極限状態のなか、わずか数分間で仕上げられた線には、嘘や迷いが一切存在しない。光り輝く赤ん坊「レイディアント・ベイビー」や吠える犬。シンプルなシルエットの中に注ぎ込まれた圧倒的なエネルギーは、数十年という年月を経てもなお、一切の衰えを見せない。この歴史的な貴重作品をこれほどまとまった形で鑑賞できる場所は、世界中を探しても他にない。